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日本人なら一度は読むべし!人生とは何かを教えてくれる「流転の海」が圧巻!

何がすごいかって先に言ってしまう!
著者である宮本輝さんが34歳の時に書き始め、完結したのが彼が71歳の時。

37年の歳月をかけて書き上げた本っていうだけですごすぎる

宮本輝さんを知らない人もいると思いますが、「大地の子」や「沈まぬ太陽」などの著者である山崎豊子さん同様、日本を代表する作家の1人だと私は思っています。

3ヶ月かけて読み終え、未だにロスでぼーっとしています。早く終わりがこないかと思いながらも、ずっと読んでいたいという気持ちが混在した本は初めてでした。

流転の海シリーズは9部作(9冊)からなっているのですぐには読破できません。37年の歳月を一瞬で読まれてたまるか!笑

あらすじ

今回も私お得意のアマゾンからあらすじをお借りします〜。

父と子の関係を軸に戦後生活の有為転変を力強く描く、著者畢生の大作。

雑かっ!!笑

では私の拙い紹介ではありますが...

この本の主人公は、宮本輝さん自身の父親をモデルとした松坂熊吾。戦後まもなく、子供は授からないだろうと思っていた矢先に妻・房江との間に息子・伸仁を授かります。そのとき妻・房江は36歳、熊吾50歳。熊吾は息子が20歳になるまでは絶対に生きようと誓います。戦後の混沌とした日本から、一気に高度成長期を迎える日本を背景に主人公である松坂熊吾の波乱万丈な人生が描かれた自伝的小説です。

およそ20年間の人の人生をこんなに長きに渡って本で見つめ続けたのは初めてでした。そして戦後の日本の描写力に、まるで私自身もタイムスリップしたかのようにその光景が目に浮かびました。

熊吾という人間は妻には暴君で暴力は振るうは、浮気はするは、事業家としての才能はあるのにお金に関してはどんぶり勘定で失敗するわ、これだけ読んだらどこがいいの?

マジで離婚案件でしかないんですけど〜

って感じでしょ?

でも決して人を騙さないし、嘘もつかない。本当に真っ直ぐな人だから何度も人に騙されるのに恨む事をしない。そして懲りずに人を信じる。面倒見もよくて、人を見放さない大将気質が多くの人を引き寄せるの。

そんな14歳も上の夫を持つ妻・房江も暗い生い立ちながらも懸命にその宿命と戦いながら必死に生きていく。夫の暴力に怯える弱々しい感じから、この妻にして熊吾あり!と言わしめる女性になっていきます。いつの時代も女性ってつえーな〜って男性なら思いますよ。笑

名言が随所に散りばめられている

この本を読んでいると当たり前のことだけれど、育ってきた環境が人生にどれだけ影響を与えるか、自分の歩んできた通りに未来は作られ、人との繋がりがいかに大事かわかるのです。

熊吾は息子・伸仁に人間としてまっすぐに育つように幼い頃から本人が理解しているかお構いなしに、あらゆる事を吹き込むんですね。それが名言ばかり!

その中でも、No.1で私の人生においても格言となりそうなものがありました。

「自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」

この格言の背景に、仏教の釈迦(シャカ)とその弟子であった提婆達多(だいばだった)の物語が出てきます。とても奥深いので是非読んでほしいです。
宮本輝さんは他の著書でも、このような昔の話や「能」・「俳句」・「古事記」など学ぶ機会が少ない分野まで触れています。そういう本が私はすごく好きです。

この本は人によって心に刺さるところが違うと思うので、読んだ人とお酒を飲みながら語り合いたい!

日本ってどんな国?

私は日本が大好きです。日本に生まれて良かったと心から思っているけど、それと同時に日本が大嫌いでもあります。矛盾しすぎているでしょう?

でも、熊吾が日本のことを表現している文章を読んだときに、自分が感じている日本を言葉にするとこんな感じだと思いました。

「日本人には決定的な欠陥がある。うまくいっているときは傲慢と尊大の塊と化し、駄目になると卑屈になってお辞儀ばかりするという点だ。そして、どっちの場合でも付和雷同する。島国の、井のなかの蛙じゃが、よその国の技術を学んで、それを自分流に発展させる能力は見上げたもんなんじゃ。」

私なら今の時代に適用させてこう言い換えます。

「日本人には決定的な欠陥がある。うまくいっているときは傲慢と尊大の塊と化し、自分より目上の人にはお辞儀ばかりし、駄目になるとネットで他人叩きばかりする。どっちの場合でも付和雷同する。これだけ異文化が流れ込んでいるのに、未だに多様化とは程遠く考えが古くさい島国の井の中の蛙じゃが〜略〜」

もし熊吾が今の日本を見たら「日本は何年経っても本質的なところは変わらんのぉ」って言うような気がします。

心の機微を感じとる

この本は淡々と人の人生を見ます。そこらへんにいるおじさん、おばさんの人生を見てるようなもの。でもね、(本の中で)20年間同じ人を見つめ続けるからこそ、思いや考えを汲み取ろうと思う。そして人生で何が大切か少しずつ見えてきます。その1つとして、熊吾の妻・房江が自殺を図るのシーンがあります。しかし運良く助かります。

“知り合い”の女性の家で自殺を図り、その女性が発見し、さらに退院した後も彼女の家で数日間過ごします。もしあなたがその“知り合い”ならどうしますか?

私なら「大丈夫?何があった?」って絶対聞きます。でも、本にはこう書いてあります。

麻衣子(”知り合い”)は、なぜ自殺しようとしたのかを訊かなかった。房江はそれをとてもありがたく感じた。

読み飛ばす人もいると思いますが、私はこういう何気ない一文にすごく惹かれます。コミュニケーションとして自分の思ってることを伝えることはもちろん大切です。でも相手を想うということは「相手の心の機微を感じること」なのではないかなとハッとさせられました。

この本にはそういう心の機微を”文字で”学べる箇所が随所に散りばめられています。

生き方が最期を決める

熊吾の性格を「火と水を交わらせる人」と表現しているところがあります。でも何が彼をそうさせてるのかと思いながら読んでいました。

本の中で、日本語もあまり話せず、読み書きもできない朝鮮人がでてきます。戦後の朝鮮人と言えば差別され、肩身の狭い思いをしていた人たちです。

その人が熊吾に「私は、大将(熊吾)と話をしておりますと・・・私は、たっとばれているという気がします。〜略〜 大将は私をたっとんでくれたたったひとりの人です」というのです。

すごく素敵な言葉ですよね。どんな相手でも尊重することを自然とやってのける性格が読み手の私含め、多くの人を魅了させた所以かもしれません。そんな熊吾の最期は本当に彼らしい!

「なんだこいつ。こんな暴君が夫ならこっちからポイだよ!

って最初は読みながらフンガーってなってたはずなんだけどなー。笑

孤独死とかなんとかくだらない事を言っている人達はこの本を読む事をお勧めします。家族とは、人生とは何か、そして人生何が起こるかわからないという事を教えてくれると思います。

最後に...

熊吾と息子・伸仁とのやりとりに笑ったり、人との最期の別れで涙したり、本の中の家族を見守っているような気持ちで読んでいました。
最期は号泣でした。今でも思い出すと泣けてきます。

もちろんフィクションも混じっていると思いますが、息子・伸仁が宮本輝さん自身なのであれば、流転の海を完結したことで父親に「見てるかお父ちゃん!僕にも秀でたものがあったやろ!」って言ってるんじゃないかな?

もっと上手に魅力を語れる人がいると思うのだけれど...

説明がへたくそなだけか...(。□。;)逆さガビーン!!

続きが気になって1、2分でも時間があろうものなら読んでいました。それを見ていた友人から「そんな風に思える本に出会えるなんて幸せだねっ」て言われたくらい素晴らしい本でした。
こんな素晴らしい本があるのに読まないなんて本当にもったいない!

宮本輝さんの他の本を読んでも思うのですが、きっと彼はロマンチストで正直であり続けようとしている人なのかもしれないと感じます。熊吾の教えがしっかり受け継がれているのではないかと畏れ多いですが思いました。

ここまで出会えてよかったと心から言える本は久しぶりでした。宮本輝さん色々なプレッシャーがあったと思いますが37年間本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。